耳鼻科の話④ 鼻副鼻腔炎2 急性副鼻腔炎
みなさまこんにちは
旭川市永山にあるさぶさわ耳鼻咽喉科めまいクリニックの院長こと寒風澤です。
本日は耳鼻科の話④ 鼻副鼻腔炎の2つ目になります。
そして今回のテーマは『急性副鼻腔炎』です。
わかりやすい説明を心がけておりますが、専門用語なども出てくるため、「耳鼻科の話③ 鼻副鼻腔炎1」をご覧になっておられない方はそちらに軽く目を通してからお読みになることをお勧めいたします。
さて、急性副鼻腔炎に関してですが、前回のブログで説明した通り、定義としては
発症後4週間以内の「鼻副鼻腔の炎症により,鼻閉,鼻漏,後鼻漏,咳嗽などの呼吸器症状を呈し,頭痛,頬部痛,嗅覚障害などを伴う疾患」
ということになりますね。
原因としてはウイルス感染がまずきっかけになり、場合によっては細菌感染への移行が起こる形になります。ですので副鼻腔炎としては、
・急性ウイルス性副鼻腔炎
・急性細菌性副鼻腔炎
に分かれる形になります。(実際はもう少し分類がありますが・・・)
ウイルス性の場合は通常10日間程度で治ってくることが多いのですが、
細菌性の場合はそれよりも長引くことが多い印象です。
イメージとしてはこのような形です。
何となく理解できるでしょうか。
①炎症により副鼻腔の開口部分が狭くなり
②細菌も増殖して膿がたまり
③副鼻腔内圧が上昇し
④顔面痛や頭痛が起こる
そして急性副鼻腔炎では、迷走神経の咳受容体の感受性が亢進して咳の症状が出ることもあります。
あれ?もしかして副鼻腔炎かなと思われた方は耳鼻科受診をお勧めいたします。
ただ・・・何かと忙しい方にとってみればなかなか病院にいく暇なんてないですよね。
ほったらかしで治るのか??
抗菌薬内服のメリットは大きいと思いますが、抗菌薬内服なしで自然に治ることも当然あると思います。
ただ、注意すべきは副鼻腔炎の合併症・・・
主に以下のようなものが挙げられます。
・眼窩内合併症
・頭蓋内合併症
・骨性合併症
合併症のうち60-80%占めるのが眼窩内合併症
画像は頭頸部外科 23(2):123-127,2013より引用
眼窩といって眼球が存在する空間に炎症が波及してしまい、膿が入ってしまうことがあります。眼が突出したり、眼が動きにくいためにものが2重に見えたり、眼が見えにくくなることもあります。
私も大学病院時代に小児の眼窩内膿瘍に対して緊急手術を行ったこともありました。
なる頻度は高くありませんが、症状が強い場合はあまり様子をみないで病院受診がいいのかもしれませんね。
さて、続いては治療に関してです。
急性副鼻腔炎の治療に関しては主に以下の3つになります。
①抗菌薬投与
②鼻処置(鼻汁吸引・自然口開大処置など)
②排膿処置(手術等の外科処置)
①の抗菌薬投与に関して簡単に説明いたします。
軽症の場合は抗菌薬なしで経過観察をすることも多いですが、中等症以上の急性副鼻腔炎、あるいは慢性副鼻腔炎の急性増悪に関しては抗菌薬の内服が推奨されております。
抗菌薬の選択に関しては各医師の判断によるところですが、
⚫︎アモキシシリン(AMPC) 高用量
処方例:サワシリン 1回500mg 1日3回
(高用量とすることで薬剤耐性菌に対する有効性も期待できるため、基本的には1回2錠(計500mg)内服)
⚫︎ラスクフロキサシン塩酸塩(LSFX) 常用量
処方例:ラスビック 1回75mg 1日1回
私はこのあたりを処方することが多いかと思います。
他は感受性を考慮してセフェム系の常用量/高用量を使用することもあります。
そして、ここまでを読んで
「あれ?クラリスやルリッドなんて薬、以前副鼻腔炎の時に処方されたけど??」
なんて思われた方はおりますでしょうか??鋭いですね・・・
実は慢性副鼻腔炎では必ずと言っていいほど出る薬ですが、急性副鼻腔炎ではあまり推奨されておりません。
日本鼻科学会発行の「鼻副鼻腔炎診療の手引き2024」にもクラリス・ルリッドなどの『安易なマクロライド系抗菌薬の使用には注意を要する』と記載されております。
残念ながら日本では副鼻腔炎の原因菌とされる肺炎球菌やインフルエンザ菌の多くが耐性化していますので使用に際しては注意が必要になるんですよね。
治療においては適切な抗菌薬選択と、しっかり指示通りに飲むことが大切です!!
そんな私は・・・午前中の外来が長引いたりすると必ず昼の分を飲み忘れてしまいます。
医師の風上にも置けません・・・
ただそんな日の午後も患者さんには繰り返しこう言います。
「1日◯回、しっかり飲んでくださいね」
本日もありがとうございました。
参考文献:鼻副鼻腔炎診療の手引き2024